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法律講座

平成20年度「高校生法律講座」実施報告

志太榛原支部 登山祐樹

 平成20年12月、静岡市葵区の静岡大成高等学校において、卒業を控えた3年生を対象に消費者問題を中心とした講義を行ってきました。
 これは、例年11月頃から3月頃にかけて行われているもので、県内の20近くの高等学校から依頼が寄せられ、学年集会の場で講演したり、クラス別に講義したりするものです。

 私がこれに参加したのは今回で3校目ですが、「高校生」というと、私自身を振り返ってみてもそうであったように、悪質商法に引っかかるとか、そういったことは夢にも思っていませんし、クレジットカードやキャッシングの仕組みも全くといっていいほど知りません。また、生活するのに毎月どういったことでいくら位支出するかとか,家計についての関心もあまりありません。

 今回担当したのは10人程度の少人数クラスでしたが、クレジットカードの仕組みを分かっていた生徒は1人だけ、家計について水道光熱費がどれ位かかるとか認識していた生徒は2、3人でした。
 ところが、社会に出た途端、様々な勧誘に触れる機会が格段に増え、何の予備知識もなければ極端なクレジットカード、キャッシングの利用に繋がることもあり、そうなれば、社会に出た最初から躓くことになってしまいます。

 かくいう私も、社会に出たばかりの頃に、いわゆる展示会商法(「展示会」と称し、販売目的を秘して店舗に引き込んでおいて、おもむろに商品を売りつける商法)にだまされそうになったことがあるのですが、このときは、高額な商品をクレジットで購入するように複数の勧誘員から交互に説得され、なかなか帰してもらえませんでした。多少の知識があったため、無事に店舗を出ることができましたが、何の知識もなければ契約書に署名させられて、多額のクレジット債務を負っていたと思います。

 また、最近ではインターネット等の通信技術の発達によって、クレジットカードやキャッシングの利用がより身近になっています。便利にもなりましたが、反対に、悪質商法に触れる機会も増えました。
 そうすると、高校生に消費者問題の実体に多少なりとも触れてもらうことは、今は実感が沸かないにしても、いつかトラブルに巻き込まれそうになった際の手助けになるに違いありません。事後的な処理は私たちの重要な職責ですが、事前予防もまた、私たちの大事な役割だと思い、これからも積極的に参加していきたいと思います。

 それから付言すると、高校生は考え方が柔軟で、意見を求めると色々な答えが返ってきて、私が思いもしなかったことに気付かされることも度々ありました。私自身にとっても勉強になり、本当によかったです。

浜松支部 内田勝善

 平成21年1月30日、浜松市の海の星高等学校において、昨年に続き「消費者問題」に関する高校生法律講座を実施しました。対象生徒は、本年卒業する3年生です。
 実際、高校生法律講座がどのように進行しているのかを紹介しましょう。

(1)
手取17万円で、一人暮らし、家賃5万円、車のローン2万円、貯金2万円、友人との食事週1回を支出した場合、そのほかにどのような支出が予想されるか
(2)
友人10人を紹介すれば紹介料で商品代を全額還元できる商品をクレジットで購入を勧められた場合の問題点
(3)
商品購入の契約の成立時
(4)
(2)で購入したクレジット代金を返還できなくなった場合の購入者の選択肢
(5)
消費者金融とのキャッシングにおける年間利率
(6)
ヤミ金融とのキャッシングにおける年間利率及び取り立て

 今まで保護者から小遣いを貰って生活をしていた高校生は、毎月どの程度の食費・光熱費が必要なのか皆目検討がつかないようです。また、食費・光熱費以外に何が生活に必要な費用なのかを考えてもらうと、電話代・ガソリン代・車検代・下着等の洋服代・散髪代が最低限必要であり、その結果、手取り17万円ではかなり厳しい生活状況となることが導き出されます。

 このような厳しい生活状況のなか、上記(2)のようなマルチ商法の勧誘を受けたと仮定して講義を進めます。勿論、生徒が友人10名を紹介したとしても、その友人が継続的に10名ずつの友人を紹介することはできません。
 マルチ商法ではいつか友人を紹介ができない友人が発生することになり、その結果、最初に契約をした生徒は、紹介できずにクレジット契約の返済のみが残った友人からみると、加害者の一人となってしまうわけです。

 返済のみが残った友人も上記(1)のような生活状況であれば、消費者金融からキャッシングをして返済に充てることも考えられます。
 その後は消費者金融を含んだ返済のために借り入れを繰り返す生活を送ることになり、借金は雪だるま式に膨らんでしまうでしょう。その結果、ヤミ金融からの借入をするようになった場合、どのような取立てを受けるのか、実際の取り立てのテープを流し実感してもらいました。

 昨今、若年層への消費者被害が増大しています。今後、高校生法律講座の受講生が、消費者被害に遭いそうになった場合、また、遭ってしまった場合に私の講義を思い出してもらいたいものです。

浜松支部 名波直紀

 平成21年2月16日、浜松市の県立浜松商業高等学校にて、高校生法律講座を行いました。今年のテーマは、「働くことについて、考えよう」です。

 私にとって「浜商」は昨年に引き続き2回目です。
 まずは、昨年同様、生徒の態度の良さに感心しました。廊下ですれ違うときも、しっかり挨拶をしていただき、講義のときも、斜に構えているような生徒が一人もいませんでした。
 昨年は、私自身少し趣旨を取り違えていて、司法書士について、私自身についての話に時間を割いてしまいました。ただ、そのときの方が目をきらきらさせて話を聞いてくれていた気がします。

 今年は、「法律講座」となるように自分にも言い聞かせて教壇に立ちました。
 司法書士についての紹介の後、事例を使いながら、通常の雇用契約と派遣契約について話を進めました。
 今回の私の狙いは、細かなテクニック論ではなく、法律の役割を理解していただくことでした。原則は何かを意識して話を進めました。法律は何のためにあるのか。私が一番伝えたいことです。

 原則は、私的自治。それを修正する必要性が生まれ、そのためにいろいろな法律ができています。
 法律とは、何か問題が発生したり、バランスを崩したときに顔を出します。でも、いつもは市民の生活を見えないところでしっかりと支えている、そんなイメージを伝えたかったのです。
 どんな権利があるとか、それをどのように行使するとかは、人間と人間との信頼関係を築きあげてからの問題であると。社会生活の中で、法律が法律として顔をださないのが一番いい姿であると私は思うのです。
 講義の中でも「高校生活の中で、高校生が法律の条文にお世話になることがあるとすれば、それは例外の話でしょ」という感じで話を進めました。

 その上で、「働く」ことについて考えていただくよう意識をしました。
 自分が社会とどう関わっていくのか、その中で、いろいろな労働形態があり、いろいろな労働者がいること、いろいろな役割のおかげで、社会が成り立っていること、そして、立場は違っても共通して守られるべきものがあること。
 それを感じる時間となるよう意識をしました。
 細かな話は残らない。生徒に何かを残すには、一つでもいいから「気付き」を持ってもらおうと思ったのです。

 最後に、たまたま観たNHKスペシャルの話をしました。
 シンガポールが国家戦略の中で、優秀な人材を世界中から集めています。良いか悪いかは別として「働く」という一つの事実です。
 極端な話を出し、生徒を揺さぶりながら、社会との関わりを考えていただきました。その上で、自分として社会に貢献できそうなことを1万時間取り組んでほしいと伝えました。

 1万時間取り組むとスペシャリストになれる。
 そうなれば、自分の思いと社会の思いが合致し、法律が顔を出すような関係にはならないと。
 混沌としたこれからの時代は、益々勉強が大事になります。どんな職業に就いても勉強を欠かしてはいけないと伝えました。自戒の念も込めながら。
 勉強とは、教科書の勉強ではなく、何でもいい、スペシャリストとしての勉強(経験)です。

 「1万時間の勉強」と言ったとき、何人かの生徒がノートにメモをとったのが見えました。
 伝わったと思った瞬間です。ああ、今年もやってしまったと思いつつ。

掛川支部 花田眞吾

 平成21年2月17日、浜松市北部にある浜松啓陽高等学校にて高校生法律講座を行いました。

 本年度は、消費者問題と労働問題の講義を準備し、実施校の希望により講座内容を選択してもらう方式としたところ、他校では労働問題を希望されるところも多かったようですが、本校では消費者問題での講義実施となりました。

 卒業を控えた3年生を対象に4クラスに分かれての実施であり、そのうち1クラス三十数名を担当しましたが、当日、生徒達は、この法律講座を受けるためだけに登校したとのことであり、このために登校してきた生徒達に対し約1時間の講義でいかに心に残る講義が出来るかを考えると身の引き締まる思いでした。

 講義は、準備されたレジュメに概ね従い、家計管理・マルチ商法を題材に悪質商法について・金銭の借入について・契約の成立・法的な対処方法の概要・利息の知識・被害の実態といった内容について、生徒たちに発言を求めながら進行しました。生徒達には、決して他人事では無く、いずれ自分の身にも起こりうることであるとの意識を持って参加してもらえるように、質問の仕方を工夫しているつもりですが、こちらから指名しないとなかなか発言がされず、生徒達からの積極的な発言は少なく、進め方についてはまだまだ力不足を感じました。

 毎年、サラ金の一般的な返済方法に従い返済を続けると、50万円借りて、総額いくらの返済総額になるかを質問していますが、この回答やヤミ金の金利などには驚愕した様子でもありました。
 講義の最後には、「うまい話には何か裏があるんじゃないか?という視点を持つこと」と、「おかしいと思ったら、1人で悩まずに出来るだけ早く周りの人や相談窓口に相談すること」の二つだけは、今日覚えていって欲しい、として締めくくりました。

 学校の話では、毎年1人ぐらいの生徒がマルチ商法に引っかかってしまい、教員にも勧誘してきたり、挙句の果ては友達もなくすことがあるとのことであり、こうしたことをとても危惧していらっしゃいました。
 生徒達が、そうした勧誘にあった時に、今日の講義を思い出してもらって被害から逃れるか、最小限にくい止めてもらうことが出来ればと願うものです。