静岡県犯罪被害者等支援条例案に関する意見

2014/10/01

当会は、表記につき、以下のとおり意見を述べる。

第1 意見の趣旨

静岡県犯罪被害者等支援条例(以下、「本件条例」という)を制定するにあたり、条例の概要8項の「犯罪被害者等の援助に精通している者」として、総合法律支援法第1条と同様に、具体的に「司法書士」の名称を明記するべきである。

第2 意見の理由

(1)総合法律支援法に基づく静岡県の責務

犯罪被害者等基本法と総合法律支援法は、犯罪被害者等の支援における国や地方公共団体等の責務を定めている。特に総合法律支援法1条は、具体的に弁護士や司法書士の名称を明記して、国等に対し、犯罪被害者が弁護士や司法書士等のサービスを身近に受けられるための体制を整備する責務を課しており、また同法9条は、地方公共団体に対し、「総合法律支援の実施及び体制の整備が住民福祉の向上に寄与するものであることにかんがみ、その地域における総合法律支援の実施及び体制の整備に関し、国との適切な役割分担を踏まえつつ、必要な措置を講ずる責務」を課している。
そうすると、静岡県が総合法律支援法に基づく責務を果たすためには、同法1条でいうところの「弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者」のサービスを身近に受けられるための措置を講ずる必要があることは明らかであり、そうであるならば、本件条例にもこれらのサービス提供者の名称を具体的に明記すべきである。
なお、明石市の「犯罪被害者等の支援に関する条例」6条3項には「市は、犯罪被害者等が犯罪等の被害(二次的被害を含む。以下同じ。)に起因して直面している法律問題の円滑な解決を図るため、犯罪被害者等の支援に精通している弁護士等による相談体制の充実その他の必要な施策を講ずるものとする」(下線は意見者が挿入)と定められており、「弁護士等」と具体的な名称を明記している。

(2)総合法律支援法に基づく当会の責務

ところで、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」5条1項や、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」6条2項、「児童虐待の防止等に関する法律」4条2項等には、それぞれ、医師、保健師、弁護士等の名称を明記して、これらの職種にある者に対し、虐待を早期に発見すべき責務や、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力する責務を課している。このように職種の名称が法律上明記されていることにより、これらの職種にある者に対し責務に対する自覚を促す効果があるのはもちろんのこと、市民にとっても、虐待防止のためにこれらの職種にある者に救済を求めることができるとの情報を予め得られることになる。
これらの法律と同じように、本件条例においても、「犯罪被害者等の援助に精通している」職種の具体名を明記することで、犯罪被害者等が、刑事手続きに適切に関与するためにはどの職種に相談したらよいのか、また犯罪被害者等が受けた損害等の回復を図るためには誰に相談したらよいのか、についての情報が予め得られる効果が期待できる。
当会には、総合法律支援法6条及び同法10条3項の規定に基づき、犯罪被害者等が刑事手続きに適切に関与できるよう、また、犯罪被害者等が受けた損害等の回復を図るための制度等を十分に利用することができるよう、「犯罪被害者支援の実施・犯罪被害者支援体制の整備」のために国や地方公共団体に必要な協力をする責務がある。
本件条例の概要8項の「犯罪被害者等の援助に精通している者」として具体的に「司法書士」の名称を明記することは、犯罪被害者にとって具体的に相談先を想定する効果が期待できると当会は考えることから、「犯罪被害者支援体制の整備」のために、意見の趣旨記載のとおり意見するものである。

(3)当会のこれまでの活動

当会は、平成17年に閣議決定された犯罪被害者等基本計画に基づき、平成19年に「犯罪被害者支援委員会」を設置し、現在に至っている。これまでに委員は、NPO法人静岡犯罪被害者支援センターの実施する直接支援員研修をはじめ、日本弁護士連合会等の主催する「犯罪被害者支援全国経験交流集会」、全国犯罪被害者の会(あすの会)の主催する研修会やシンポジウムに積極的に参加した上で、次のような事業を展開してきた。

  • 1・「司法書士犯罪被害者支援2010」編集
    当会の全会員へ配布するとともに、全国の司法書士会へも頒布した。
  • 2・「暴行・傷害被害者相談会」、「DV、ストーカー被害者相談会」の実施
    内閣府犯罪被害者週間に合わせて、平成23~25年度に実施した。
  • 3・ 会員向け研修の実施
    平成22年度から、司法書士による犯罪被害者の実務に関する研修を実施している。
  • 4・ 常設の「司法書士総合相談センターしずおか」の設置
    日常的に県民の皆様からの法的紛争に関する相談を受け付けている。平成24年度の集計では、犯罪被害に関する相談は179件(全体の4.4%)にのぼる。

(4)地域連携における当会の役割

犯罪被害者支援に関する業務として、当会が担うことのできる分野は、次のとおりである。

  • 1・ 被害者に対する被害弁償を実現するための民事手続きに関する業務
  • 2・ 加害者の適正な処罰を求める端緒としての検察庁へ提出する告訴状、告発状の作成業務
  • 3・ 法務局へ提出する人権侵犯救済申告書の作成業務

したがって、地域連携における「司法書士」の責務は、被害者等の依頼を受けて行う、被害者等が受けた損害又は苦痛の回復又は軽減を図るために必要な刑事手続き、民事手続き及び人権侵犯救済手続きにおける法的支援であり、「当会」の責務は、その実施体制の整備である。

平成26年9月22日
静岡県司法書士会 会長 西 川 浩 之