武富士更生手続開始決定を受けた会長声明
平成22年10月31日、東京地方裁判所民事第8部(以下「東京地裁」という)は、株式会社武富士(以下「武富士」という)に対し更生手続開始の決定をした。
武富士は、今日までに、完済者を含めた全顧客との取引につき、利息制限法に基づく元利充当計算を終了し、この結果、約200万人の過払債権者の存在が判明したそうである。
本件更生手続が公正かつ適法に進行されるためには、約200万人の過払債権者全員が債権者一覧表(会社更生規則13条)に記載され、東京地裁より開始決定書が送付される必要がある。
そうでなければ、債権者一覧表に記載されない過払債権者は、更生手続開始決定の事実を知る機会が奪われ、配当を受けるために必要な債権届出を行うことなく失権してしまう可能性が残る。
武富士はこれまで、現に顧客から過払金返還請求を受けている約16万人の過払債権者だけを債権者一覧表に記載し、残りの約184万人はこれに記載せず、新聞広告やテレビCMを通じて債権届出を促す方針との説明をしてきており、その後この方針が変更になったとの情報を得ていない。東京地裁も、武富士の方針を受け入れ、更生手続開始の決定をしたものと考えられる。
しかし、約184万人の全員が新聞広告等による告知を目にするとは考えられないし、告知を目にしたとしても、その告知によって「自分も債権届出が必要」との認識を持つことができる者は一部に限られるものと考えられる。
告知を目にすることができなかった者、告知を目にしても「債権届出が必要」との認識を持てなかった者は、いずれも配当を受ける権利を失ってしまう。
武富士自身が「債権者」として認識している約200万人の過払債権者を、債権者一覧表に記載しないまま手続が進行されるならば、本件更生手続は重大な瑕疵を伴う違法な手続であると指摘せざるを得ない。
東京地裁が、全過払債権者に等しく債権届出の機会が保障されないことを知りながら更生手続開始の決定をしたことは極めて遺憾であり、当会は、これが是正されるよう強く求める。
平成22年11月1日
静岡県司法書士会 会長 早 川 清 人