除かれた戸籍の附票の証明可能期間制限に反対する意見書
第1 意見の趣旨
当会は、除かれた戸籍の附票の証明可能期間を全員が除籍となった日から5年間と制限することに反対である。
第2 意見の理由
(1)「 空き家」問題対策としての相続登記に不可欠
不動産登記において、登記記録されている情報は「住所」「 氏名」である。このため登記申請人と登記記録上の所有者等との同一性を証明するためには、過去の住所の証明として、除かれた住民票及び除かれた戸籍の附票(以下「除かれた戸籍の附票等」という)を活用するケースが多数存在する。
このため除かれた戸籍の附票等の証明可能期間を5 年に制限した場合、相続登記手続きを行う市民に対し、思いがけない経済的・事務的負担をかけることになりかねない。
このことが顕著に現れるのは「空き家」を含む相続の場合である。言うまでもなく、空き家等対策において相続登記の推進は重要である。平成2 9 年度に実施予定の浜松市空家等対策計画においても、空き家等の発生の予防として、相続対策の推進を掲げているが、除かれた戸籍の附票等の証明可能期間を5 年と制限することはこの方針と逆行する対応である。
(2)公共事業推進に必要な所有者の把握に不可欠
公共事業用地の取得、農地の集約化、森林の適正管理をはじめとする様々な分野で、不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても連絡がつかない土地(以下「所有者の所在の把握が難しい土地」という)への対応が、基礎自治体において大きな課題となっている。
都道府県や市区町村建設担当部局等で公共事業等に際し、所有者等(相続人を含む)を特定する際に苦労した点として戸籍の附票の写し等の交付が認められなかったことを多数あげている。また、国土交通省所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会最終とりまとめでも法令上の保存期間を経過した除かれた戸籍の附票等の活用を図る環境整備を求めている。
(3)「未来につなぐ相続登記の促進」に不可欠
平成2 8 年1 0 月、私どもは、静岡地方法務局、静岡県土地家屋調査士会とともに、東日本大震災からの復興に関連して顕在化した問題である長期間にわたり相続登記が未了で所有者の所在の把握が困難な事案等に対する取り組みとして、貴市に対して未来につなぐ相続登記の促進の要請を行い、これに対し、貴市からは相続登記促進への協力の回答をいただいているが、除かれた戸籍の附票等の証明可能期間を5 年と制限することは、この回答と逆行する対応である。
(4) 社会基盤整備に不可欠
以上の通り、除かれた戸籍の附票等の証明期間を5 年と制限することは、登記という社会基盤整備に不可欠な情報の整備に多大な影響を及ぼしかねない。
「経済財政運営と改革の基本方針2016」(平成2 8 年6 月2 日閣議決定)において、成長と分配の好循環の実現のため、「空き家の活用や都市開発等の円滑化のため、土地・建物の相続登記の推進」を掲げるなど、国を挙げて相続登記の促進を図ろうとしている今だからこそ、関係機関と協議した上で市民にとってよりよい方策を導くべきである。
平成29年2月13日
静岡県司法書士会 会長 杉山陽一