民事訴訟法(IT化関係)部会による審議開始に際しての会長声明
1 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の設置
令和2年2月21日開催の法制審議会第186回会議において、法務大臣より、「近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに、時代に即して、民事訴訟制度をより一層、適正かつ迅速なものとし、国民に利用しやすくするという観点から、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、情報通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など民事訴訟制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」との諮問(第111号)が発せられ、これを受けて、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会が設置された。同部会の審議は、本年5月から開始される。
審議される内容としては、オンラインによる訴状等の提出、訴訟記録の電子化を前提とした訴訟記録の閲覧、ウェブ会議等を利用した当事者不出頭の口頭弁論期日及び争点整理の実現はもちろんのこと、オンラインを使用した訴訟資料の送達、手数料の電子納付等により幅広く民事裁判手続のIT化を図るとともに、IT化に留まらず国民目線で国民の司法アクセスを向上させるために適正かつ迅速な裁判を目指すための特別な訴訟手続等の制度設計を検討することも見込まれている。
当会では、同部会の審議を経て、国民にとっての利便性がなお一層高まるような民事訴訟法改正となることを期待しているところである。
2 民事裁判手続のIT化における司法書士の使命
(1)本人訴訟の支援者として
IT化により、民事裁判手続の利便性が高まることになっても、国民が利用できないようでは絵に描いた餅となってしまう。近時、ITの利用が国民に身近な存在になったとはいえ、IT機器を保有していない者やその操作に習熟していない者は少なからず存在する。
一方で、司法書士は、本人訴訟をする当事者に対して、本人訴訟をする当事者からの相談に応じ、裁判書類の作成を通じて、本人訴訟の支援を行うことを業としてきた。
これからは、国民の利便性向上のために、従来の業務に加え、書面の電子化及びオンラインによる訴状等の提出等のIT支援をも当然に行っていくことが司法書士に課せられた使命であると考える。
(2)代理人として
IT化による新しい司法制度が定着するためには、まず、訴訟を業とする代理人が積極的に活用しなければならない。ITの利用が個別事件の利便性向上だけでなく、民事裁判手続全体の効率化になるのだから、ITの利用は代理人の義務になると言っても差し支えない。
一方で、司法書士は、簡易裁判所に対して、代理人として訴訟業務をするとともに、既に、法務局に対しては、代理人として登記業務をオンライン申請でしている実績がある。
これからは、登記業務のオンライン申請の経験を活かし、簡易裁判所の民事裁判手続のIT化に対応していくことが司法書士に課せられた使命であると考える。
3 司法書士会としての決意
当会では、民事裁判手続のIT化に際して司法書士に課せられた使命を果たすため、会員への周知ならびに研修を重点的に行っていくとともに、国民の司法アクセス向上のために、当会の司法書士総合相談センター等において、IT支援として、国民が容易に書面の電子化等をすることができるよう、日本司法書士会連合会とともに、準備を進めることを、ここに決意する。
令和2年3月23日
静岡県司法書士会 会長 白井聖記