平成27年度事業計画(案)
1.地域の司法書士制度に対する理解がさらに深まるよう努めること
過去4年間、静岡県司法書士会(以下「本会」という。)は「地域社会との更なる連携」を最重要点課題としてさまざまな事業を行ってきた。それは、私たちが活動し続けるこの地域において、司法書士制度の必要性、意義を認識・理解してもらうことこそが、司法書士制度の発展につながると考えたからである。
具体的には、①生活保護の分野での「生活保護支援ネットワーク静岡」の活動や自死対策での「絆プロジェクト」事業(浜松市)に多くの会員が関与できたこと、②消費者問題の分野においては、主に本会主催の研修会を契機として、消費生活センター相談員、消費者問題ネットワークしずおか、行政担当者等と情報交換や信頼関係の構築ができたこと、③犯罪被害者支援の分野では静岡県警察本部との連携の具体化にこぎつけたこと、そして、④成年後見の分野では公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート静岡支部(以下「リーガルサポート静岡支部」という。)と協働し、社会福祉士会、精神保健福祉士協会、介護支援専門員協会や社会福祉協議会、地域包括支援センターなどの福祉関係者との意見交換、事業の協働ができたことがあげられる。
平成27年度も、今までと同様、その連携に努める。すなわち、静岡県司法書士政治連盟、一般社団法人静岡県公共嘱託登記司法書士協会、リーガルサポート静岡支部と協働し、たとえば、県及び県内各市町(特に災害協定締結市町)、行政機関、日本司法支援センター(法テラス)、他士業その他関連業界等諸団体との協議、意見情報交換を行い、また、必要に応じ、相談会・シンポジウム等の共催も行う。その結果、静岡県における司法書士の存在意義、存在価値を高めたいと考える。また、このように司法書士界外の空気に触れることは、司法書士の可能性を考えるよいきっかけにもなるはずだ。多くの会員の積極的な参加・関与を期待する。
2.相談活動の充実と研修研究活動を通じて、会員及び司法書士業務の質を向上させること
私たち司法書士は、司法書士法が定める業務を通じて、国民の権利保護に寄与することを求められている。平成12年の成年後見制度実施や平成14年司法書士法の改正の結果、司法書士の業務及び権利保護に寄与する形もさまざまなものになっているが、その原点は、市民がくらしの中で直面する法律問題に的確に答えていく相談活動にあると考える。本会常設の司法書士総合相談センターしずおか(以下「相談センター」という。)は年間4000件を超える相談に応じているが、まだまだ、県民は気軽に相談でき、かつ、有益な法律情報を提供してくれる場所を求めているはずである。本会は、その需要に対応できる体制を整え、相談活動を通じて市民の要請に応えていきたいと考える。
その体制作りとは、まず、登録相談員の質の向上を目的とした登録相談員対象の研修会や情報提供に努めることである。その際には、今までの相談センターでの相談内容や研修会のテーマの分析等を通じ、提供する内容を適切なものにすることに配慮していく。次に、登録相談員の増加のために、まだ登録していない会員が安心して積極的に相談活動に取り組める環境整備を行っていく。誰でも初めて会の相談活動に参加する場合、プレッシャーを感じるはずである。また、相当の経験を経ても、最近の相談内容の複雑さ・範囲の広さを知ると、同じようなプレッシャーを感じるだろう。それらを少しでも軽減できるように、研修部が企画する研修会のテーマ設定を行っていく。
さらに、前述のとおり、司法書士の業務の多様化は誰もが認めるところであり、従来の司法書士の枠にとらわれず、自ら創意工夫し、依頼者の求めるところにストレートに切り進む司法書士も少なくない。その精神、知識、経験は尊重され、学ばれ、伝えていく必要があると考える。このような活動ができる場(例えば、現在、支部で行われている業務研究委員会的活動)を作り、さらなる質の向上を実現したい。それが、会員ひとりひとりの司法書士像の構築につながればよいと考える。
3.会員全員で会務に取り組むこと、支部、本会それぞれの役割を認識すること等を通じ、会全体の活力を高めること
本会は約490名の会員数を誇るが、定時総会出席者数は例年3割程度に止まり、残念ながら各事業部の事業執行の担い手には固定化の傾向がうかがえる。
本会は司法書士制度の発展のため、つまり、現在及び将来の私たちのために事業活動を行っているのである。本会(執行部)としては、多くの会員に本会事業に関心を寄せてもらい、そして、参加してもらえるようにしたい。
そのために、少しでも多くの会員が事業執行に直接関われる機会を増やしていく。具体的には、本会各委員会に原則として業務歴3年以下の会員を少なくとも1名は加える、研修会その他会員が参集する場で事業内容について説明する機会を設ける、理事会の傍聴を促す、さらには、日本司法書士会連合会(以下「日司連」という。)等の総会の傍聴の機会も提供することなどを行っていく。
また、会員の本会会務への関心は、支部活動の活性化によってももたらされるはずだ。支部長会とも連携・協議し、企画広報・研修・相談の各事業で本会が実施すべきこと、支部でできることは何かを、中・長期的観点に立ち検討していく。
4.司法書士会及び司法書士制度の次代の担い手を育てること
本会の存在とその活動は、その先端性、質の高さ故、常に全国司法書士の注目を浴び、高い評価を得てきた。これはその時々の社会問題に真摯に取組んできた多くの会員活動の賜物であり、これからも同レベルの活動を継続し、これを次の世代に引き継いでいくことが現在の会員の使命だと考える。そうすることが静岡県民のこれからの権利保護につながると考えるからである。そのためには次代の担い手を育てることが必要である。即効策はない。日々の事業活動(例えば、現在、支部で行われている業務研究委員会的活動)の中で、「つないでいく」ということを意識し、活動を続けていく。
総務部
1.会則・諸規則の整備、会務財政の検討
(1)現在の会則、規則、規程類の点検、見直しを行い、「司法書士関係法規集」(改訂版)を発行する。併せて、年度途中で制定、改廃があった場合、随時、司ネットフォーラム等に掲載し、閲覧の迅速性、利便性を高める。
(2)会の財政について経理部とともに中長期的な把握、検討を行うとともに、各部の事業執行について、把握、調整等に努める。
2.会員の会務への参加促進
会務について一部会員に固定化されていたり、集中化されている現状に鑑み、会員全員が会の活動を支えていくという共通認識に立ち、より多くの会員が会の活動に参加できるよう、環境を整える。
3.苦情対応窓口の機能強化
(1)市民からの苦情申出に対し、適切かつ迅速に対応する。
(2)近時多発している業務上不祥事の根絶対策として「司法書士会市民窓口設置規則」及び「司法書士会市民窓口の運営に関する規程」を制定し、「司法書士会市民窓口」を設置する。
4.災害対策委員会の設置、災害時危機管理体制の整備及び災害協定締結の推進等
総務部内に「災害対策委員会(仮称)」を設置し、対内及び対外的に災害時危機管理体制の整備を更に進める。
(1)本会における災害時危機管理体制の更なる整備
(2)災害協定締結済みの各市町と具体的支援方法についての協議並びに相談員派遣体制の構築
(3)災害協定未締結の市町へ協定締結の働きかけ
(4)静岡県災害対策士業連絡会との意見交換
5.会員への周知・連絡手段及び役員会・委員会内部の連絡・協議手段の検討と議事録、事務局資料の電子化の検討
(1)会員への周知、連絡手段としてインターネットを活用するとともに、現状の郵送、FAX、司ネットフォーラム等の利用についての再検討。
(2)役員・委員会内部の連絡・協議手段として利用しているHotBiz回覧板、メーリングリストなどの見直し。
(3)会議議事録、事務局資料等の電子化を検討。
6.業務広告に関する規則制定について
「会員の業務広告に関する規則」を制定することで本会会員の司法書士としての品位を保ち、不適切な広告により市民の利益が損なわれることのないようにする。
また、会員の業務広告による情報提供が妨げられることがないよう、的確な解釈及び運用を図る。
7.事務局運営の合理化と改善
毎年増え続ける事務局業務に対応するため、業務の効率化を図る。
(1)事務局職員からの提案を取り入れる等、事務局と執行部との間で意思疎通を図るため定例会議を開催。
(2)会議資料等の膨大化を防止し、コピーコストの低減を図るため、資料の電子化を検討。
8.司法書士会館修繕計画について
平成26年度、大規模修繕を実施し当面課題となっていた必要的修繕は終了したものの、今後も建物本体、設備などの機能低下を防止し、資産的価値の維持、耐久性の向上をめざし、定期的に建物診断を実施し修繕計画を立て、適切な会館建物の維持をめざす。
9.会員の登録に関する事項
司法書士登録に関し、登録事務の円滑な運営を図る。
10.事務局運営の合理化と改善
(1)司法書士業務賠償責任保険を継続維持し、円滑な運用を図る。
(2)新たな契約形態(他の司法書士会と共同して契約する方法、日司連に保険契約を委託する方法)を選択できるよう、会則及び所要の規程を一部改正する。
11.司法書士会館修繕計画について
平成26年度に引き続き、住宅金融支援機構及び福祉医療機構の承継登記に関する事務管理を継続する。
12.本会通信の発行
経理部
1.完全定額会費制による本会会費の適正な収入の確認と事務局における管理
2.新しい特別会計(会館修繕特別会計並びに自然災害相談活動特別会計)の定着化に向けての適正な収入の確認
3.各事業支出(各部会・委員会等)および各管理費(特別会計支出を含む)の適正な執行状況の把握と確認
4.業務会費(証紙)特別会計並びに会館建設特別会計の廃止と繰越資産の一般会計並びに特別会計への繰り入れ
5.業務会費(証紙)特別会計並びに会館建設特別会計の廃止に伴う旧規程の廃止と関連規程の改正を総務部と連携して行なう
企画広報部
1.部全体のテーマ ~ 「選択と集中」「原点回帰」
(1)ここ数年の成果
早川執行部以降、本会では「地域社会との連携」をテーマに様々な活動に取り組んできた。「利用者から信頼されない団体はいずれ淘汰される」との考えの下、必ずしも司法書士実務と直結しない社会問題について本会・企画広報部内に対応部署を設け、先駆的に活動する関係諸団体の活動に積極的に関与することにより、地域社会からの本会への信頼を得ることを重要テーマとして位置づけてきたわけである。
地域社会の活動に法律家としての立場から積極的に参画を続けた成果は、生活保護の分野では「生活保護問題ネットワーク静岡」の活動を地域に根付かせ、自死問題の分野では浜松市における「絆プロジェクト」が全国各地からの注目を集める事業に発展させたほか、県、富士市、静岡市等においても地域連携事業が進められている。
また、消費者問題の分野では消費生活センター所属の相談員さんや「消費者問題ネットワークしずおか」等との連携、成年後見の分野ではリーガルサポートとの協働の下で社会福祉士会や地域包括支援センターなどの福祉分野との連携、犯罪被害者支援の分野では警察との連携などをそれぞれ形づくることに寄与した。さらに、相談センターニュースと県民だよりを駆使し、相談センターと広報委員会とが協働して精力的に取り組んだ広報活動の成果もあいまって、本会に対する地域社会からの信頼と評価は、数年前のそれとは格段の進化を遂げたことに間違いない。
(2)会内の現状
地域社会から寄せられる信頼や評価を確固たるものとするというテーマには長期的視野が必要ではあるが、それを実現するためには会員がより積極的に会の事業に参画することが必要である。にもかかわらず昨今の会内の状況は、仕事量の減少を原因とする閉塞感が否定できず、若い会員の中にも会務への参画や勉強会への出席に消極感をもつ者は増加傾向にあるのではないだろうか?このような状況の中、平成27年度の企画広報事業では、会員の会務への参画をどのように確保するかという視点にも目を向ける必要がある。
ところで、本会の研修会等の事業に関心がないように思われる会員でも、支部事業には積極的に参加しているという話を聞くことがある。そうした行動 は、単純に「楽しいもの」「利益になるもの」には参加するが、「関心のないもの」「利益にならないもの」には参加しないということではないだろうか?たとえば、本会でしばしば行われる倫理的または学究的な研修や、仕事に直結しない社会活動は「つまらない」「利益にならない」と映っているのではないだろうか?
しかし、同じ内容であっても、進行を考え、事前準備を行い、その事業の先に何らかの利益があることを示すことができれば、参加意識は芽生えるのではないかとも思われる。
(3)平成27年度の基本的なスタンス
以上の考えの下、平成27年度の企画広報部ではふたつをスローガンとして掲げたい。そのひとつは「選択と集中」であり、次のような基本的スタンスに基づき事業執行を進める。
①企画広報事業のうち、本会が関わることが絶対的に必要な事業とそうでないものとを選択する。
②本会の関わりが必要な事業は、さらに集中して行う。
③企画広報部が関わらないものについては、他部や関連他団体での引受けを検討してもらう。
④参加して「楽しい」「利益になる」「仕事の幅が広がる」「自信がつく」という視点に立ち、会員の参加意識を高める方策を考える。
もうひとつのスローガンは「原点回帰」である。
「原点」とは「実務」そのものである。他の資格者の追随を許さない高いレベルの実務を提供することは、法律実務家集団たる司法書士会の武器であり、社会に対する責務でもあり、外部からの信頼に応え続けるための基盤にもなることは疑いない。また、その一方で、社会からの大きなニーズとしては、このような高いレベルの実務だけでなく、ちょっとしたアドバイスや支援にあるという点にも目を向ける必要がある。
このような基本的スタンスの下、会員全体の資質向上と会全体の活性化に取り組むことを目的とし、下記の事業を執行していく。
2.業務研究委員会の新設
そこで、平成27年度企画広報部では、いくつかの支部で実践されている「業務研究委員会」の導入を実施したい。委員会の下部には多分野の業務を研究する複数の研究グループを設置する。各グループは機動的な研究を重視する趣旨から、可能な範囲で同一地域の会員により構成するものとする。また、いわゆる「名ばかり」のメンバーを作らないため、各グループは最大でも8名の小グループを15グループほど設け、登録3年以内の会員については原則としていずれかの研究グループに所属しなければならないものとする。
各グループには1年度あたり一定額の予算措置を講じるが、支出方法についてはグループリーダーに委ねる。会議ごとの旅費日当は支給しないが、講師招聘料、書籍代、他団体の研修会参加費用、外部向けセミナー開催費用、相談会開催費用等、各グループの研究活動に資する方法で活用いただきたい。
委員会は各研究グループへのアドバイスや進捗管理などを担い、各グループは2年間かけてそれぞれの研究成果をまとめ、平成28年度定時総会の付属資料として成果物を会員に提供することを予定している。なお、「会員への情報提供」は副次的効果と位置付け、グループに所属する研究会メンバーのレベルアップを第一義とする。また、各分野における「実務」を意識し、研究の成果を確実に実務に落とし込むような“腰の据わった勉強会”を目指したい。
3.広報
「効果的な広報」という観点から、下記のとおり事業の取捨選択と改善改良に努めたい。
なお、会が行う広報事業の目的は、地域住民や関係機関の皆さんに司法書士を知ってもらい、司法書士を活用してもらうことにすぎない。
専門家集団である本会における最大の広報とは、会員全員が質の高い法的サービスを社会に提供し続けていくことであり、地域社会からの信頼を勝ち得るためには、会員一人ひとりが会の広告塔であることを自覚して日々の業務に邁進されることをお願いする次第である。
(1)広報事業
司法書士会が行う広報は、①「司法書士」を広く社会に知ってもらうための広報、②「司法書士の仕事」を紹介し司法書士の利用を促すための広報、のふたつに分けられる。
平成27年度の広報委員会では、このうちの①を担当することとし、HO2の発行、県民だよりへの広告出稿、ホームページの管理を継続する。
HO2は読者からの反響が大きく、関心をもって読んでいただける広報ツールとして定着しているが、年に1回だけの発行であることから広報効果としては不十分である。また、分量が多く内容も多岐にわたることから、細部にまで行き届いた誌面構成という点では、改良すべき余地も少なくない。そこで、上記①の性格を中心としたより親しみのある広報ツールとして、ボリュームを落として年に複数回発行していくこととする。
また、ホームページにはさまざまな意見が寄せられるが、大きな予算をかけてホームページを改修するよりも、ブログやフェイスブックを活用した動きのある情報発信に取り組むほうが経済的かつ効果的な広報につながるのではないかと考えており、現状のツールを活用しながらも新たな情報発信の手段を検討してみたい。
一方、年4回発行してきた「ニュースレター」は、上記②の性格を有する広報ツールとして、「ま・も・る」と相談事業部が所管してきた「相談センターニュース」「消費者問題通信」の三つを取り込む形で相談事業部に移管し、相談事業部の下でリニューアルしていく。
(2)法教育事業
また、法教育事業については、その性格を広報事業として位置付け、事業を通じて司法書士への関心や理解が深まることにより、司法書士を活用いただくことを目的に据えることとする。
平成26年度後半からの事業として形になりつつある老人会を対象とした法律教室と相談会との抱き合わせ事業については、平成27年度に本格的な事業化を進めていきたい。また、平成26年度に初めて試み、参加者から高い評価を受けた親子法律教室についても、継続事業として取り組んでいきたい。
なお、外部からの講師派遣要請に関しては、引き続き企画広報部において対応する。また、高校生法律講座についても、現状のレベルと規模を維持して継続していく。
4.社会問題への対応
(1)社会保障の研究
平成19年の貸金業法改正の際、私たち司法書士はさまざまな団体と力を合わせて「返せない人には貸さない」ことが健全な消費者信用市場であると訴え、借りられなくなった人のために「社会保障の充実」を求めてきた。
上限利率の一元化とみなし弁済規定の廃止が実現し、借りられなくなった人のために生活保護行政に対する監視の輪が広がり、平成27年4月には、新しい制度として生活困窮者自立支援事業がスタートした。 金利引下げの運動を通じて私たちが求めた社会は、着実に形作られているのであり、法改正運動に携わった私たちが新しい制度に無関心でいることは、およそ社会から容認されないだろう。
そこで、平成27年度の市民権利擁護委員会は「生活困窮者自立支援事業への対応」と「社会保障制度の研究」のふたつを研究テーマとして掲げて会員の執務に資する情報提供に努めるほか、年度内にこの分野における県内諸団体との意見交換を実施することを検討したい。
(2)成年後見事業
成年後見の分野では、例年どおり権利擁護懇話会、成年後見無料相談会をリーガルサポートと共同開催するほか、成年後見業務に関連するその他の事業にも市民権利擁護委員会で対応する。
(3)受け皿機能
市民権利擁護委員会がこれまで担ってきた「連携の受け皿」機能は維持するが、委員会としては(1)(2)以外の具体的な事業執行は予定していない。
会が連携を模索する第一段階としては、受け皿となる部署を設け、外部に対し積極的に連携を働きかける事業執行は有効な手段であったが、すでにそれぞれの団体の中で個々の司法書士が活躍し、司法書士が様々な社会問題に取り組むことが当然のこととして社会に認知されるようになった現状において、企画広報部としてのこの役割は終えたい。なお、それぞれの活動に参画する個々の司法書士の活躍を通じ、司法書士会全体への信頼と評価が失われることはないと考えられる。
もっとも、それぞれの活動に参画する個々の司法書士を会としてバックアップする体制を整備する必要があるから、一定の人的・金銭的支援を可能とする予算措置を整備することとする。
5.その他の事業の改廃
司法書士界内における関連団体との役割分担に棲み分けを図る趣旨から、静岡大学と常葉大学における司法書士ガイダンスは静岡県青年司法書士協議会(以下「青司協」という。)へ主催団体を移行し、本会事業から切り離す。
また、当初は広報目的で開始した「高校生1日司法書士」事業だが、広報的効果としては実績が乏しく、むしろ法律に興味のある高校生に司法書士を目指す動機づけとしての効果が注目されるようになっている。そうすると、その目的は大学におけるガイダンスと同様であると考えられるので、これも存続を含めて青司協に委ねることとする。
主に会員への情報発信という性格を担っていた財産管理・登記・裁判の各業務推進委員会は廃止し、新設する各業務研究グループの中でそれぞれの専門性を特化する方向への事業へと転換する。民法改正委員会も業務研究グループのひとつに位置づけ、2年度をかけて改正法施行時に社会に対していかにプレゼンするかという観点で研究を続けていく。
研修部
1.会員研修
(1)単位制研修
会員研修では、これまで企画広報部や相談事業部、その他関連団体が企画する研修との調整を図りながら研修会を実施してきたが、今後も幅広く社会のニーズに対応できる専門性をもった司法書士として、会員全体の資質の底上げを目指すことが重要と考える。このため、最近の相談内容や社会の変化などを考慮しながら、会員にとって有益となる情報の提供や意識の向上を図るための研修会を実施したい。
また、平成26年度は、会員研修、裁判事務研修、財産管理研修について、各々テーマを定めて複数回の研修会を実施したが、平成27年度は、研修テーマに関し、柔軟かつ幅広い視点でさらに専門性に磨きをかけるものにすることを心掛けたい。
同時に、知識の提供に留まらず、実務を支える倫理・思想や司法書士としての自覚を促すという視点も意識したものにしたい。
なお、平成27年度は、1回、1回の研修についてさらに丁寧に企画し、会員に何を伝え、何を持ち帰ってもらいたいのかを明確にして、講師との打ち合わせを綿密に行い研修に臨む所存である。
(2)会員特別研修
定例の研修を補う会員特別研修は、例年通り、法改正や司法書士制度、社会の変遷に即した研修を企画していきたい。
(3)年次制研修
年次制研修に関しては、数年にわたり「参加猶予」の申し出をしている会員がいるが、履修率の向上を目指して粘り強く連絡を取るようにしたい。該当会員の研修参加の機会を確保するために、平成27年度も土、日2回の開催を検討したい。
2.新人研修
(1)配属研修
配属研修については、配属先の負担や配属先事務所の選定が年々難しくなっている現状があるが、これまで通り連続した6週間を実施期間とする。日々の相談業務に当たる姿勢や方針の決定、依頼者との関係などは、実務現場を肌で感じることで養われるものであるから、非常に貴重な機会であると考えている。毎年、配属先事務所には負担を掛けているが、今後も引き続きご協力をお願いしたい。
また、効率よく配属先事務所の決定を図るため、決定までの流れ等についてのルール作りをしたい。
なお、配属先指導員へのガイダンスについては、毎年引受けに協力してくださる会員も少なくないことから、実施の有無も含めて改めて検討したい。
(2)集合研修
例年通り、中央新人研修・関東ブロック新人研修で不足する部分を補う研修を実施する。また、昨今、配属研修先事務所の選定が以前より難しくなってきている。今後は、事件の減少等により、配属研修後の実務経験期間は、以前よりも短いものになることが予想されることから、配属研修を補うことができる実務の知識や相談技法、倫理等を習得することが課題となる。
そのため、効果的、かつ実務に直結した研修を集合研修として企画する。
(3)フォローアップ研修
近時の登録したばかりの司法書士は、特定業務に重点を置く事務所に勤務したり、独立開業した司法書士も実務経験が浅いためか日常業務の拠り所となる倫理面での配慮に欠ける者もいたりする。また、現在、実施している登録前の新人研修は、受講者が登録前であるためか、司法書士としての職責や実務に関する現実感に乏しく、研修のねらいや意図が登録後の司法書士実務に十分に生かされていないことも考えられる。今後も司法書士制度が市民から長期的に支持されるためには、司法書士登録前の新人だけでなく登録後の司法書士の育成が必要不可欠である。
そこで、試験合格後1年以上経過し、実務を経験した新入会員からの執務報告を受けて、事件の処理方法の改善点や他の選択肢の可能性等についてディスカッションをする場を設け、新入会員の執務の向上につながる研修を実施したい。
なお、実務や倫理感に優れた司法書士の育成をより充実したものにするために、日司連が平成27年度から実施する予定の新入会員研修プログラムに関する情報や資料等を収集し、体系的な新入会員研修について検討する作業を進めていきたい。
3.その他
例年のとおり、特定分野研究グループの支援をしていきたい。特定分野研究グループの成果を会員に提供できるように働きかけをしていく。中央新人研修や特別研修の講師やチューターの派遣も引き続き行う。また、支部研修を充実させるため支部との情報交換や本会からの情報提供を実施していきたい。
相談事業部
1.「司法書士総合相談センターしずおか」の運営 ~ 信頼される相談機関としての成長
相談センターでは平成26年度に引き続き、利用者からさらに信頼される相談機関として成長することをテーマに掲げたい。関係機関や県民の皆さんに「法律相談は司法書士」という認識を深めていただくことはもちろんのこと、事業報告でも述べたとおり、法律実務家が対応する相談機関としての強みを押し出し、相談だけで終わるのではなく、「相談から解決まで」を意識して取り組んでいきたい。
この意識を相談員全員に繰り返し周知し、相談員の皆さんには徹底した「司法書士の紹介」をお願いしたい。また、紹介先となる会員の皆さんには、相談センターからの紹介事案に誠実に対応いただくことを重ねてお願いする次第である。
また、これも平成26年度からの継続事業となるが、①登録して日の浅い相談員に対し改めて相談センターの歴史やルール、常設相談の在り方等を説明する機会を設け、相談センターの登録相談員としての姿勢を共有すること、②相談員研修の規模を拡大し、より幅広い相談に対応するためのスキルアップを継続的に実施することの2点をさらに推進し、「相談の質の向上」に努めていきたい。
一方、「受任事件の増加」という観点から、「相談センターニュース」「HANREPO」や、平成26年度に発刊した書籍の有効活用、利用者に情報が直接届くようなきめの細かい相続登記未了不動産解消事業の推進、税理士会との合同相談会、任意後見セミナー等の各事業について、より高い効果を求めてマイナーチェンジを重ねながら着実に事業執行を進めていく。
2.女性相談会の実施
平成26年度に犯罪被害者支援の分野で試みた「女性司法書士による女性のための相談会」を、テーマを限定せずに年間を通じて数回にわたり開催したい。
近年、テーマを限定したスポット的な110番事業の相談件数が伸び悩んでいたが、他会で実績を上げている事業であり、一定の相談需要を喚起することができるものと見込まれるため、将来の定例事業化に向けて試験的な実施を検討したい。
もちろん、実現のためには多くの女性会員の皆さんのご協力が不可欠である。利用者への幅広い相談機会の提供という趣旨をご理解いただき、積極的な事業への参画をお願いする次第である。
3.効果的な「法の日相談」「相続登記はお済みですか相談」の実施
平成27年度は、法の日相談・相続登記はお済みですか相談の両相談会をさらに地域の実情に沿った効果的な事業としていくため、支部長の皆さんのご協力をいただきながら改善策の検討を進めていきたい。
現状でも両相談会には、地域に根差した定例事業として一定数の相談が寄せられているので、運営方法、内容、広報等に工夫を凝らすことにより、大きな相談需要の喚起が期待できるものと考えられる。
4.消費者問題対策事業
消費者問題の分野は次々と新しい法制度が創設される特徴があるが、最近でも高齢者被害の未然防止を目的とする消費者安全法や集団的取引被害の回復を目的とする消費者裁判手続特例法の創設(平成28年12月までに施行予定)、電気通信事業法にクーリング・オフを導入する検討などのほか、今後も消費者契約法、特定商取引法、割賦販売法などの重要な法改正が予定されている。
多重債務問題が収束するに連れ、司法書士の消費者問題への関心が薄まり、この分野における実績も低調となっているのが現実ではあるが、この状況を改善ずるためには消費者問題に関する関係法規に強い多数の司法書士を養成し、躊躇なく事件を受任できる環境を整備することが不可欠である。「実績」を作るためには、実績作りを担う「人材養成」が重要であるとの観点に立ち、平成27年度も引き続き消費者関連法の研究チームを発足したい。研究対象は委員会組成後に検討するが、過去2年間に行った消費者契約法や特定商取引法の研究を深めることも考えられるし、近く改正が予定されている割賦販売法をテーマとすることも考えられる。
その他、消費者問題シリーズ研修の企画運営については、こちらも相談センターと同様、より高い効果を得るためのブラッシュアップを常に意識して取り組んでいきたい。
なお、日司連消費者問題対策委員会では、全国各地の単位会を回り、司法書士会と地元の消費生活センター、行政職員、福祉関係者等との連携作りを目的とする「消費生活セミナー」を毎年複数会場で実施しているが、過去の開催会を対象としたアンケート調査の結果を見ると、必ずしも十分な成果が表れているとは言えない状況にある。一方、本会の実施する消費者問題シリーズ研修は、まさに消費者問題の分野における地域連携を目的として開催されている事業であり、提供する内容は他会での利用にも十分耐えうるレベルにあるものと考えられる。そこで、平成27年度の同研修を録画して他会へ情報提供するなど、同研修会の有効的な二次活用についても検討したい。
5.犯罪被害者支援事業
平成26年度に実施した懇話会は、事例検討の方式に内容を変更して継続したい。司法書士が実際に対応した相談者の事案を素材とし、犯罪被害者支援に関わるそれぞれの関係者が立場ごとにどのような支援を提供できるのかを議論することで、関係機関の役割を共有し、相互理解・相互連携を一層深めることに役立てたい。
また、県警との連携を端緒とし、相談センターに寄せられる犯罪被害者からの相談が増加することが予測されるため、これまで発行してきた「れんげ草通信」の発行目的を、従来の会員に向けた犯罪被害への注意喚起という視点から、実際に相談を受ける際の注意点に関する情報提供へと変更し、相談過誤や二次被害の防止を意識していきたい。