出資法の上限金利引き下げを求める決議
決議の趣旨
平成15年7月、ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部改正法)制定の際、出資法の上限金利については同法施行後3年を目途に見直すこととされ、その時期は平成19年1月と言われている。当会は、依然として減少しない多重債務問題の原因である、サラ金、クレジットの高金利につき、出資法の上限金利引き下げを求め、以下のとおり決議する。
- 1.出資法の上限金利を、利息制限法の制限金利まで引き下げること
- 2.貸金業の規制に関する法律43条のみなし弁済規定を撤廃すること
- 3.日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること
上記の目的を達するために、行政、国会、マスメディアなど関係機関に対し具体的な提言を行う。
平成17年5月28日
静岡県司法書士会 第84回定時総会
理 由
平成14年に20万件を突破した破産申立件数は、平成16年に減少こそしたが、一方で、個人債務者再生手続の申立件数は増加し、司法書士が代理人となる任意整理が急増している現実があり、多重債務問題は依然として深刻な社会問題であることに間違いありません。
このような社会情勢の中、平成19年1月に予定される出資法の上限金利の見直しに向け、平成17年は極めて重要な時期であり、多重債務問題に力を注いできた当会としても、決して見過ごすことができない問題です。
貸金業者側は、上限金利を引き下げたことがヤミ金を跋扈させる原因になったと説き、自己に都合のよい学者の論文を基に金利自由化論を唱え、上限金利引き上げ・撤廃に向けた猛烈な活動を繰り広げているとの報告があります。同論文に対しては、既に日司連消費者法制検討委員会が意見書「上限金利撤廃の弊害と引下げの必要性」を取り纏めており、各方面からの支持が寄せられています。また、日弁連消費者問題対策委員会からは、金利自由化に踏み切った米国の実態調査(「消費者信用事情訪米調査報告書」)が発表され、金利自由化と悪質事業者の市場からの排除が、別次元の問題であることが明らかとされています。しかし、貸金業者側による金利引き上げ・撤廃の要請に対抗し、上限金利引き下げを実現するためには、関係団体が一致団結し膨大なエネルギーを運動に注ぎ込むことが求められます。
現在、わが国の公定歩合は年0.10%、銀行の貸出約定平均金利は年2%以下という超低金利状況下であるにもかかわらず、出資法の上限金利年29.2%は大変な高利です。金融広報中央委員会が実施した世論調査では、2003年における貯蓄を保有していない世帯の比率が21.8%にも上っています。このことは、余裕資金のない世帯が、突発的な資金需要に対応できず高利に手を出せば、たちまち生活が立ち行かなる事実を伺わせます。
市民が安全に生活できる消費者信用市場の構築と、多重債務問題の抜本的解決のために、少なくとも、出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで早急に引き下げることが不可欠なのです。また、利息制限法は債務者の生活を守るために極めて重要な法律であり、その例外を定める貸金業規制法43条のみなし弁済規定は認めることができませんし、同様に日賦貸金業者や電話担保金融の特例金利も認めることができません。
よって、多重債務問題解決に向けて、出資法の上限金利の大幅な引き下げを求めるために、行政、国会、マスメディアなどの関係機関に対し具体的な提言を行う決議を求めます。