会長声明「札幌高裁判決後に公表された日本学生支援機構の対応について」
会長声明「札幌高裁判決後に公表された日本学生支援機構の対応について」
静岡県司法書士会
会長 白井 聖記
令和4年5月19日、札幌高等裁判所は、独立行政法人日本学生支援機構(以下「学生支援機構」という。)の前身である日本育英会の第2種奨学金 ― いわゆる貸与型の奨学金 ― に関し、連帯でない保証人(以下判決文に倣って「単純保証人」という。)が、分別の利益により自己の保証債務は奨学金返還債務2分の1であるのにそれを超える金額の支払を余儀なくされたとし、その超える部分の返還等を求めた事件について、判決を言い渡しました。
札幌高裁判決の要旨は、その事件において認められる事情の下では、「主たる債務が可分債務である場合には、各保証人(筆者注:ここでいう保証人とは、その事件における単純保証人を指す。)は平等の割合をもって分割された額についてのみ保証債務を負担すると解するのが相当」であり、「保証人による自己の負担を超える部分に対する弁済は無効であって、保証人は、債権者に対し、当該超過部分相当額の不当利得返還請求権を有するというべき」というものでした。
この高裁判決を受け、学生支援機構は、そのウエブサイトに「札幌高等裁判所判決を踏まえた今後の保証人への対応について」を掲載し、「本機構に記録が存在する過去5年以内の返還完了事案を含め、保証人の方から自己の負担部分を超える弁済を受けた返還金についても、個々の保証人にご連絡した上で速やかに超過額の返金手続を進めてまいります。」との見解や「これまで保証人の方への請求に当たっては返還未済額の全額を請求してきたところですが、今後は判決内容に照らし、返還未済額の2分の1の額を請求させていただくこととします。」との見解を公表しています。
当会は、学生支援機構に対し、自ら公表した対応を適切に行うことを求めるとともに、5年以上前に返還完了したケースについても、できる限り保証人の個々の事情に配慮した柔軟な対応をするよう求めます。
また、当会は、これを機に、教育の無償化や給付型奨学金のさらなる拡充はもちろん、必ずしも終身雇用とはいえない現下の雇用情勢に鑑み、貸与型奨学金の制度そのものの合理性についても議論されるよう求めてまいります。