平成22年度事業計画
現在の社会状況を鑑みるに、これまで長期にわたって吹き荒れていた制度構造改革の嵐が一段落し、その成果を定着させる安定期に突入するものと考えていたにも拘らず、劇的に政権交代した民主党下において尚、安定した社会形成には程遠く、時代の変革を求めるうねりは未だ止むことはありません。
このような状況下であるが故、市民のニーズに応えられない専門職資格者は経済社会と云うステージから即刻退場を宣告されてしまうことでしょう。
司法制度の一翼を担う法律専門職たる司法書士にとっては、如何に法の豊饒化に寄与できるかが今後の制度発展への大きな試金石となり、そして、その実現への尽力こそが司法書士に課せられた職責であります。市民社会から私ども司法書士に求められているのは、あまねく法的紛争解決に対し、必要な情報やサービスの提供が円滑に受けられ、等しく法の理念を享受できる社会の実現に向けた取り組みと云えます。
現在、連合会を中心に司法書士法改正に向けた活動が展開されておりますが、これこそ社会状況をしっかり見据えて将来像を語るべきものであり、要求のみに終始し、市民のニーズと乖離した司法書士像を提示したならば、社会から失望され、制度崩壊に押し流されてしまいます。「司法」の担い手としての自覚の下、市民の期待に対し十全に応えていく更なる姿勢が求められているのであって、本会としては、その具現化たる実績の積み上げに、今まで以上に努力を惜しまない姿勢を貫いてまいります。
また、民法をはじめとする各種法律の改正検討を絡め、社会環境の変化に対する情報収集整理を怠らず、適切な素早い対応が可能となる高い組織的機動力を培い、より機能的な会務執行体制を構築してまいります。
近時「司法書士の業務上横領等不祥事」への対応が論議されています。これら事件は、市民からの信頼を根底から崩しかねない問題であることは確かですが、会員各位におかれましては、必要以上に浮足立つことなく、襟を正すべきは正し、信念を持った執務内容には自信を以って臨むと云う姿勢を堅持頂きたいと思います。本会においては、当会会員からこのような不祥事を出さないことへの尽力は勿論ですが、万一惹起された場合には毅然とした態度で臨むべく施策を講じていく所存でおります。
その他重要な課題として、市民社会から専門職能に対する要求として示された本人確認等の徹底、登記オンライン申請利用推進へ向けた執務環境整備、消費者問題への対応、調停センターふらっとの利用促進等への積極的な取り組みを展開し、各分野において充分な成果が示せるように、支部及び他の司法書士団体(組織)との連携を強化し、開かれた会務運営に努めてまいる所存です。
会員各位におかれましては、今後も引き続きまして司法書士会活動へのご理解ご支援のほどを宜しくお願い申し上げます。
重点事項
1.登記オンライン申請等の普及促進
(司法書士業務の高度情報化対策)
2.簡裁訴訟代理等関係業務の受託推進
3.成年後見制度の普及促進へ向けた対応
4.研修制度の充実
5.市民権利擁護事業の推進
6.「司法書士総合相談センターしずおか」の事業推進
7.「静岡県司法書士会調停センターふらっと」の運営
8.民事法律扶助制度の活用推進
9.消費者問題等への対応
10.司法書士制度広報の推進と情報公開
11.「日本司法支援センター(法テラス)」との連携
12.隣接士業者団体・行政機関等との連携、協働
13.支部活動への支援体制強化
14.会務財政の改善に向けた施策の検討
総務部
1.会則・諸規則・会務財政の検討
定額会費制度に関するアンケートを実施し、定額会費制移行に向けた準備、検討を進める。
(主な検討点)
①定額会費制に移行した場合の会費額
②会館建設事件数割会費制度の存続又は廃止
③会費減免制度の創設
2.対内広報の充実
会員宛通知等の電子メール化(ペーパーレス化)に向けた準備を進める。
(主な検討点)
①「会員宛文書等の取扱いに関する規則」制定の必要性
②電子メールにて配信する文書等の範囲
③メール通知未登録者への対応
④会員への周知方法
3.災害時危機管理体制の整備
会員及び本会事務局用防災マニュアルを作成・配布する。
災害発生時における連絡方法を確立する。
防災訓練を実施する。(平成22年9月1日を予定)
静岡県東海地震対策士業種連絡会へ参加し、情報交換を行う。
4.会員の執務・品位保持・紛議処理に関する事項・非司法書士排除活動への取り組み
5.会員の登録に関する事項
6.事務局の運営及び会館管理、事務局体制の効率化
7.他団体との情報交換並びに交流
8.業務賠償責任保険の維持・管理
9.住宅金融支援機構等への承継登記にかかる事務管理
経理部
1.会費(定額会費・業務会費)の適正な納入の確認と管理
2.各部会における予算執行状況の把握・確認
3.本会会計における顧問会計事務所による監査と適切な会計指導を受けること。
4.会務財政諸規則検討委員会による今後の会費の在り方(定額会費一本化に向けた問題など)について、同委員会とともにその検討をすること。
企画広報部
1.対外広報の充実と「広聴」制度の検討(広報事業)
平成21年度までにホームページ、ニュースレター(年4回発行)、HO2(年1回発行)の3つのツールに役割分担された対外広報を、平成22年度もさらに拡充していく。
特にリニューアルオープンしたばかりのホームページについては、会員や読者である市民の皆様の声を広く反映させながら、内容の充実・拡充に取り組む所存である。
一方、HO2冒頭の座談会では「制度広報」を取り上げ、司法書士を志す2名の学生さんの目から、私たち司法書士がどのように映っているのかについてご意見をいただく機会を得た。ホームページの拡充とも関連するが、広報活動に幅広く市民の声を取り入れていくためにも、「広報」活動だけでなく、市民モニター制度等の「広聴」制度の導入を検討すべき時期にあるものと考える。
よって、平成22年度の広報委員会では、一年を通じて広聴制度導入の意義やその手法等について議論を重ねたい。
2.関係機関とのさらなる連携の強化 ~さまざまな社会問題への対応
(1)市民権利擁護事業
平成21年度は、市民権利擁護事業の分野で多くの関係機関との連携を築くことができた。
当会会員が静岡市地域包括支援センターの運営協議会委員に就任したり、静岡市や浜松市における自死対策協議会のメンバーに加わったり、あるいは生活保護支援ネットワーク静岡が主催する相談活動への協力を通じて、県内のハローワークや労働局とも連携を図ることができる体制を築くことができたのは、関係機関に司法書士を広く認知していただくことに寄与したばかりでなく、それぞれの分野で法の光が届かなかった市民に対し、その抱えている問題を法的解決に導くことにも寄与できた。
市民権利擁護事業の活動が両翼を広げることは、結果として市民の司法アクセス拡充につながるものであり、また市民からの司法書士に対する信頼をより強固にするものと考えられる。よって平成22年度は、さらにこれらの連携を強化し、また他市町村や他機関にも拡充させ、一層の効果が上がるように邁進したい。
なお、平成22年度は大きな社会問題となっている「自死」を取り上げ、県との連携の下、市民と一緒に「自死」を考えると共に、広く市民やマスコミ、関係機関に対し、司法書士がこの分野でも一定の重要な役割を果たしていることを理解いただくことを目的とした公開シンポジウムの開催も企画している。
一方、平成22年度はリーガルサポートが10周年の節目を迎える。そこで、成年後見業務を広く広報する絶好の機会と捉え、リーガルサポート静岡支部及び県社会福祉士会とも連携し、10周年の記念式典を開催する予定である。
また、ニュースレターや「ま・も・る」等の会が発行する機関紙は、これら連携を築く契機として大変に有効なツールとして利用できるものであるから、その内容の充実にも力を入れていきたい。
(2)士業種交流事業
社会の複雑化に伴う市民の法的ニーズの多種多様化に対し、士業交流事業の一環として開催される合同法律相談は、市民の法的相談にワンストップで対応できる事業として一定の意義と成果を果たしている。平成22年度も引き続き、各種相談事業に積極的に協力していきたい。
一方、平成21年度の事業計画でも指摘したとおり、事業のマンネリ化を指摘する声も少なくない。他士業との交流の中で、司法書士会の位置づけや役割を積極的にアピールすることを引き続き実施していきたい。
3.法改正への対応(制度問題対策事業)
平成21年度は、民法改正議論の活発化、日司連による司法書士法改正に関する意見照会という私たちの業務に直結する大きな法改正をめぐる動きが現実化した。これらの動きに、当会としての十分な対応をとるための受け皿を設けるため、従来の「登記実務対策委員会」を「制度対策委員会」に改称し、これまで登記実務対策委員会が担当してきた新オンラインシステムに関する会員への情報提供や、登記を中心とする制度広報の充実に加え、両法の改正議論を会員の皆様に提供できるよう、努めていく所存である。
民法改正では、若手会員から広く委員を募り、多岐にわたる改正議論の中から重要論点を絞ったチーム分けを行い、各チームにおいて年間を通じて研究いただいた成果物を全会員に提供し、実務に役立てていただく予定である。また、必要に応じ、外部に対する意見表明にも対応したい。
司法書士法改正では、平成22年度のできるだけ早い時期に、先般の日司連による意見照会の起案者、意見を提出した当会ワーキングチームや日司政連ほかの担当者をお招きしたシンポジウム形式の研修会を企画し、重要テーマごとの改正案に関するそれぞれの考え方を会員の皆様にも分かりやすくお伝えし、今後の法改正へ向けた議論の活性化に寄与したいと考えている。
また、新オンラインシステムの導入も間近となっているため、会員の皆様が新制度にソフトランディングできるための研修会や、支援ソフト業者による合同プレゼン会等を企画する等のフォローアップに努めたい。
4.出張法律講座の開催(法教育事業)
社会への巣立ちを目前に控えた高校3年生を主な対象として開催してきた「高校生法律教室」の事業は、県内各高校から高い評価を受け、年々依頼も増加している。平成20年度からは、質の向上を図ることを目的にはじめて講師向け研修会も開催され、平成21年度には、統一レジュメの改訂にも着手したが、現場における使い勝手はまだまだ十分とは言えない。
そこで平成22年度は、質の高いレジュメ作成に徹底して取り組んでいきたいと考える。また、新たに講義を担当いただく新しい会員の掘り起こしとその養成も重要な課題である。
信頼のある出張法律講座を目指し、質の向上に力を注ぎつつ、多くの高校からのオファーに応え続けていく覚悟をもって取り組んでいきたい。
5.図書目録の整備
平成22年度も、年度中の目録完成を目指して引き続き蔵書の整理を進める。
一方で、会員の図書室の有効活用もテーマに掲げ、年間を通じて検討していきたいと考える。
6.予算措置 ~会議費の拡充
以上のとおり、次年度の企画広報部の事業計画をご審議いただきたいが、企画広報部は、他部と比較して「やるべきこと」が固まっていないことの多い部署である。逆に言えば、それだけ可能性を秘めた部署であると言えるし、例年、その可能性を模索し実現するための事業計画を立案しているところである。
可能性を形にするまでには、委員会メンバーにより継続的な議論を積み重ねたり、あるいは腰を据えた継続的な研究活動に取り組んだりする必要がある。そのため、平成22年度の企画広報部では、以上の事業計画を邁進するために必要な予算措置として、会議費の増額をお願いするものであり、こちらもあわせてご審議をお願いしたい。
研修部
1.会員研修の実施
現在、本会が関わる研修事業は、研修部所管の他にも企画広報部、相談事業部、ふらっと、リーガルサポート、他と多岐に亘り、それぞれ専門性に特化した充実した研修会が実施されている。こうした中、研修部としては、より多くの会員の執務に資する研修、タイムリーで最新の情報を盛込んだ研修、社会情勢の変化に合わせ必要とされる(必要となるであろう)知識に関する研修の実施を心がけて企画運営に取り組んでいく所存である。
また、定例の研修を補うものとして会員特別研修を位置づけ、法律、制度、社会の変遷に即した研修の開催を心がけたい。さらに、平成21年度に実施した研修に関するアンケートの回答を踏まえ、研修テーマの選択にも活かしていきたい。
一方、静岡県司法書士会調停センターふらっとの協力を得て、特別研修として「相談技法・ADR研修」を実施したい。その他にも、定例の研修で賄えないテーマについては、各部や他組織とも連携のうえ特別研修として実施したいと考える。
2.新人研修
(ア)配属研修については、平成21年度と同様に延べ8週間での実施期間としたい。また、配属研修迄の間に、新人に対し、配属研修における心構えについて研修を行い、配属研修の実効性を高めていきたい。
(イ)日々の相談業務に当たる姿勢《相談技法》の重要性が注目されていること、また、こうした研修は相談者に対するスタイルが出来上がる前の新人のうちに受講した方が実効性が高いと思われることから、前記「相談技法・ADR研修(特別研修)」を集合新人研修に組み込み、集合研修については計9日間の実施としたい。
3.研修履修状況のHP公開
研修履修状況のHP(ホームページ)公開の是非については、平成20年度から検討が続けられてきた。組織の透明性や情報公開が求められる時代背景もあり、既に研修履修状況のHP公開を実施している司法書士会や他士業もある。さらに、こうした情報が公開されることは司法書士を利用する市民の利便性にも資するものと考えられる。
そこで、当会においても、履修・未履修について正確な集計を行ったうえで、平成22年6~8月頃には、当会ホームページ上の会員名簿部分において研修履修状況の公開を開始する予定である。
4.その他
(ア)事前に研修会資料に目を通すことにより、研修の実効性が高まると考えられることから、司ネットフォーラム等への研修会資料掲載について検討を行いたい。
(イ)講師謝礼基準について、作成から年数が経過していることから、内容の見直しと文言の整備を行いたい。
相談事業部
1.事業計画における相談事業部の重点テーマ
司法書士総合相談センターしずおかの運営にあたり、「連携」をキーワードに次の活動を行う。
①市民と司法書士との連携を図る。
②行政、異業種、地域との連携を図る。
③日司連と本会との連携を図る。
④本会における事業部相互間との連携を図る。
⑤相談事業部内における委員会相互間との連携を図る。
2.事業計画
①市民と司法書士との連携を図る。
・司法書士総合相談センターしずおかの相談体制の充実
(常設相談・当番相談・NTT受信代行システムの運営)
・相談員向けの研修の実施
・一般民事事件受託増加の対策(各種110番の実施等)
・法の日記念事業の実施
・相続登記はお済みですか月間の実施
・貸金業法完全施行に向けた多重債務相談の強化
(クレサラ110番の実施等を含む)
・犯罪被害者支援の対応
・その他相談活動充実のための市民に対する一切の事業
②行政、異業種、地域との連携を図る。
・行政担当者等との研修会等を通じた連携の一層の強化
・法テラスとの継続的連携
・静岡県の消費者問題連絡会議等、各種会議・研修への参加
・クレサラ再生通信の発行
・その他相談活動充実のための行政等に対する一切の事業
③日司連等と本会との連携を図る。
・日司連の相談活動に関する会議・研修等への参加
・関東ブロックの相談活動に関する会議・研修等への参加
・その他相談活動充実のための日司連等に対する一切の事業
④本会における事業部相互間との連携を図る。
・常任理事会等での活発な情報交換
・研修や広報と連携した相談業務の充実
・静岡県司法書士会調停センターふらっととの連携
・その他相談活動充実のための事業部相互間に関する一切の事業
⑤相談事業部内における委員会相互間との連携を図る。
・MLの活発な活用による情報の共有
・他の委員会事業等にも参加を促すことによる委員の人材交流
・その他相談活動充実のための委員会相互間に関する一切の事業